【報告者】浅見 哲
2018年5月30日(水) 手術2日目
AM7:30 宿を出てムヒンビリ大学病院に向かいました。初めに前日手術をした11人の診察を行いました。手術翌日から視力は改善し、患者さんにも非常に喜んでいただきました。
術後の患者さんと小嶋先生
いっぷう変わった視力検査表
行燈のような形をした視力表を回転させるとランドルト環(日本で一般的なC型の視標)の他に見慣れない視標もありました。
前日に壊れた超音波測定装置の代替機が、ムヒンビリ大学病院Academic Medical Centerから研修医の手により届き安堵しました。しかし、使ったことのない機種であり使用方法が分からなかったため、初めは苦戦しましたが視能訓練士の吉川静香さん方のおかげで何とか検査できるようになりました。
2日目の白内障手術の予定は、前日から持ち越した3名を含め13名でした。また、噂を聞きつけて手術予定でないのに来院し、これ以上の受け入れはなかなか難しいことを説明し帰っていただいた方や、現地ドクターが手術候補リストに挙げたものの手術を受けられなかった方々と現地ドクターがもめる一幕もありました。
この日の手術には現地メディアの取材が入りました。
ちょうど浅見が手術をしているところを撮影していただきました。現地のタンザニアで報道されたニュース番組のリンクを以下に載せますので、ご興味があればご覧ください。
いつの頃からか、タンザニア眼科医療支援チームのお守りとして法然上人(として扱っている)置物に活動に同行していただいております。浄土宗の高校出身の山﨑俊先生が「活動の安全祈願のお守り」として用意されたものですが、今では活動メンバーの精神的支えとなり、本活動に無くてはならない存在となっています。
手術中の小嶋先生と手術を見守る法然上人像(手前の置物)
2日目になると現地の眼科医師、レジデントともだいぶ打ち解けてきました。「どうしたら超音波白内障手術ができるようになるのか」と熱心に聞かれたり、「このままもっと長期に滞在して教えて欲しい」、と頼まれたりしましたが、現実的な問題としてなかなか叶えてあげることができないもどかしさがありました。私が手首につけていた蚊除けのバンドに興味を示し、マラリア予防であると説明すると、「マラリアが怖いの?」と笑われてしまいました。ここタンザニアではマラリアは非常に身近な存在で、誰でも体内にマラリア原虫が潜伏しており、その活動性が高まり熱発すると学校や仕事を休んで、熱が治まったら普段の生活に戻るという、日本での風邪にかかった程度の認識くらいしかないようです。「いっそのこと、タンザニアにいるマラリアの半分くらいを日本に持って帰ってよ!」という冗談も飛ばしていました。
眼科ドクターや眼科レジデントとの記念撮影
写真撮影の際のピースサインはタンザニアでも同じのようです。
手術終了後の集合写真
オペが終わった後は、在タンザニア日本大使の吉田雅治氏に、夕食会に招いていただき、在タンザニア日本大使公邸にお邪魔させていただきました。
大使館側の出席者は、吉田雅治大使(写真前列左手)のほか、小杉隆史医務官(後列左端)、藤原稔久三等書記官(後列右から3人目)、今さん(JICA草の根技術協力事業、前列左から2人目)でした。
吉田大使は、これまでフィリピンや中国広州、米国シカゴなどの諸外国に赴任され、2015年4月から現在の駐タンザニア日本大使として着任されました。また、小杉医務官は、十数年前まで静岡済生会病院の救急科で働き、その後外務省に入省し、世界各国の医務官として働いていらっしゃるそうです。
「タンザニア国内のインフラがこの数年で劇的に改善してきている」、というお話がありました。「数年前までは日に何回も停電していたものの、最近は停電回数もかなり減り、インフラが整ってきていることを実感している」、というお話でした。しかし、そのお話のそばから、大使公邸が一瞬停電になり、予備電源で回復するということがありました。実際に山﨑先生の話によると、本活動の第1回から5回くらいまでは手術中にも1-2回数分程度の停電があったそうです。しかし、最近ではほとんど停電はなくなりました。水力発電所の設備が充実してきたことが功を奏しているそうです。
また、吉田大使が前任の岡田眞樹大使から聞いた、アフリカでの中国人の活躍ぶりについてのお話として、「中国の人口は日本の10倍であるので日本の10倍優秀な人材がいる。アフリカでの中国人の活躍ぶりには目を見張るものがある。最近の世界における中国の躍進の縮図がアフリカで見てとれる。日本人もうかうかしていると置いていかれてしまう。」というような趣旨のお話もされ、なるほど、アフリカでの中国人の存在感はそれほどのものかと感じさせられました。
タンザニアの医療事情についてのお話もありました。眼科はもちろんのこと、救急医療の遅れがあり、病棟では患者に急変があっても病棟看護師は連絡をすると怒られるからという理由で医師を呼ばないので、安心して現地の医療機関を受診できない、というお話でした。
残念ながら、当日は大使専属の料理人が不在であったため、ギリシャ人シェフのケイタリングでしたが、おいしい料理をいただきながら、吉田大使や小杉医務官の貴重なお話を伺い、あっという間の2時間でした。
中庭には素敵な日本庭園がしつらえてありました。敷き詰めてある白い砂利はタンザニア産ということです。