緑内障とは?
緑内障について
緑内障とは、眼圧(眼内の圧力)によって視神経乳頭が障害され視野狭窄を起こす病気です。緑内障といっても様々な種類がありますが、大きくは開放隅角緑内障、閉塞隅角緑内障に分類されます。隅角とは、角膜と虹彩が形作る部位をさし、そこには線維柱帯という眼内の水(房水)が吸収される組織があります(図1)。緑内障のうち、その隅角が広いか狭いかによって、開放隅角緑内障(図2a)、閉塞隅角緑内障(図2b)と分類されます。開放隅角緑内障のうち眼圧が正常であっても発症し進行してしまう正常眼圧緑内障が日本の緑内障患者さんの9割を占めます。
緑内障には他に続発緑内障(あらかじめ他に眼や全身に病気があり、その原因のために引き起こされた緑内障)や発達緑内障(生まれつき隅角に異常があるタイプの緑内障)などがあります。
現在、日本における失明原因の第1位の疾患はこの緑内障であり、一度起きた視野狭窄は改善することがないので、早期発見・早期治療が非常に重要となります。しかも40歳以上の日本人における緑内障有病率は5%、そのうち8割の人は緑内障が未発見のまま放置されていると考えられていて、意外に多くの人が緑内障であることがわからないままでいることが指摘されています。近年緑内障の診断や治療は著しく進歩していますので、早期に発見し、早期に適切な治療にとりかかることにより、少しでも進行を遅らせることが望まれます。
図1.房水の循環
- 毛様体で産生された房水は眼内を循環し、隅角にある線維柱帯から吸収される。
図2.隅角の広さによる緑内障の分類
- a) 開放隅角緑内障
- b) 閉塞隅角緑内障
緑内障の症状
人は通常両眼で見ていることがほとんどですし、緑内障の進行は緩やかな場合が多いので、初期は緑内障による視野狭窄があっても自覚がないことがほとんどです。したがって緑内障の患者さんの多くは、病状が進行して視野狭窄や視力低下が悪化してから、はじめて自覚することになります。さらに視野狭窄が進行し、視力低下がすすむと、場合によっては失明することもあります。これらの緑内障の症状は通常は緩やかなことが多いのですが、急性緑内障発作では急激に眼圧が著しく上昇し、眼痛・充血・目のかすみのほか、頭痛や吐き気を自覚することもあります。この場合は、視力低下や視野狭窄は一気に進行しますので、早めの対処が必要となります。
主な治療法について
緑内障の治療は、緑内障の進行を遅らせるためのものであり、見え方を改善するものではありません。しかも緑内障が恐ろしいことの理由の一つは、喪失した視野や視力を治療によって取り戻すことができないことです。
緑内障の治療の基本は眼圧を下げることにあります。無治療の状態で眼圧が高い、低いにかかわらず、その方の元の数値から眼圧を下降させることが治療の方法であり目的となります。
線維柱帯からの房水吸収が低下し、眼内の水分量が増えることで眼圧が上昇してしまう開放隅角緑内障や、眼圧が正常である正常眼圧緑内障では第一の治療方法は点眼療法です。点眼薬を使用しても眼圧が下降しない場合や、一定の下降が得られたにもかかわらず視野狭窄の進行が止まらない場合に、手術を選択することになります。
手術の種類は大きく、濾過手術と流出路再建術とに分類されます。当院ではどちらの手術も実施しています。
- 濾過手術:眼内の水を眼外の結膜下に流す通路(バイパス)を作る手術(図3)
- 流出路再建術:目詰まりを起こして水の吸収が低下した線維柱帯に、切り込みを入れて水の吸収を回復させる手術(図4)
図3.濾過手術
- a) 強膜に弁を作成し、前房との間の通路を作成します。
- b) 強膜の弁を元に戻し、その弁の下から滲みだしてきた房水を結膜の下に溜めて、濾過胞という水溜まりを作ります。
図4.流出路再建術 (トラベクロトミー)
- 何らかの原因で房水の吸収が低下した線維柱帯に切れ込みを入れることで、房水の吸収が増し、眼圧が低下します。
どちらの術式を行うかは目標とする眼圧により選択します。眼圧をより低くする必要のある進行した緑内障では濾過手術を、眼圧を正常値付近にすれば十分進行を遅らせることができると予想される高眼圧の緑内障では流出路再建術を選択します。最終的に術式の選択については、それぞれの眼の特徴や視野進行の程度、生活環境などを考慮に入れて適応を個別に考える必要があります。
その他に眼圧上昇の原因が別にあればその治療を最優先に行います。例えば、先述の急激な眼圧上昇をきたす急性緑内障発作は原因が膨隆した水晶体にあるので、診断名が「緑内障」ではありますが、原因となっている水晶体を操作する「白内障」手術を主とした治療法で解決できる場合があります。
緑内障治療は、このように点眼薬と手術、それぞれの組み合わせでなりたっています。現在点眼薬は非常に多種類にわたり、組み合わせなどをそれぞれの患者さんの病態や経過に合わせて考えていきます。手術療法においても上記の代表的な手術の他にも新しい治療が取り入れられています。いずれにしても長期間治療が必要となるため、個々のケースに応じて進行の程度も考慮しながらどのように治療をすすめていくか決めることになります。その際点眼薬と眼圧については非常に大切な情報となりますので、患者さんご自身で点眼薬をきちんとさしていただくことはとても重要です。
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手術後について
手術後の診察について
手術直後から大体2週間くらいまでは密な診察間隔が必要です。
この時期は、流出路再建術では眼圧の変動しやすい時期にあたり、濾過手術では術後の眼圧下降の維持に最も影響する時期にあたります。特に濾過手術ではこの期間に傷口の縫合に用いた糸を切ったり、濾過を維持するための眼球マッサージをしたりと、実に様々な処置が必要になることがあります。個人差が大きいため、診察の際に主治医としっかりお話しましょう。
手術後の生活についての諸注意事項
緑内障手術では術後一時的に出血をきたす場合がありますので、しばらく視力が低下する恐れがあります。他にも様々な状態の変動が考えられますが、これも元の眼球の状態や術後経過により個人差が大きいのが実情です。やはり診察の際にしっかりお話しましょう。
医師からのメッセージ
緑内障は、治療のエンドポイントがない生涯にわたって治療し続ける疾患です。長い診療期間には良いときもあれば苦しいときもあるかもしれません。挫けず一緒に頑張りましょう。