近視

近視とは?

「眼球の形が前後方向に長くなり、光線のピントが合う位置が網膜より前になっている状態」のことです。眼鏡(凹レンズ)を用いることでピントを網膜に合わせることにより像を鮮明にすることができます。(図1)

図1 近視についての図解
図1 日本眼科学会HPより

どうして起こるの?

近視の発症には遺伝的要因と環境要因の両方が関与していることがわかってきています。
発症に関与すると考えられている環境要因には近方作業、屋外活動の減少などが考えられています。新型コロナウイルス感染症のパンデミックとなったことで、子供のデジタル機器使用時間の増加や屋外活動の減少が起こっている状態であることから、更なる近視の子供の増加が懸念される状態です。また、学校でもICT活用が推進されていることにより学習デジタル機器の使用が増えています。情報化社会においてICT活用は必然ですが、学習環境は近視を生じやすくなっていることを理解しておく必要があります。

近視の頻度は?

Holdenらが行った報告によると世界における近視人口は2000年には22.9%(約14億人)にあるのに対して2050年には49.8%(約48億人)に増加し、さらに高度近視の割合も増えることが予測されています。(図2)
令和3年度学校保健統計調査(速報値)では、裸眼視力が1.0未満となっている子供は7歳で28.1%、12歳57.4%、15歳65.4%と多くの子供が裸眼視力の低下していることがわかっています。(視力悪化の詳細データ(近視、遠視、乱視)は不明)(図3)

図2 世界における近視人口予測
図2 世界における近視人口予測(Holden BA、et al.Ophthalmology,123:1036-42,2016より引用)

図3 令和3年度学校保健統計調査
図3 令和3年度学校保健統計調査 

近視に伴う合併症について

近視は主に就学期に眼軸(目の前後の大きさ)が伸びることで生じます。眼軸長が伸びることによって様々な合併症が起こります。近視性黄斑症、網膜剥離、緑内障などが挙げられますが、将来的に高度近視になることでその危険率がさらに上がります。そのため、近視進行を予防することが将来の合併症予防においても重要となります。

当院での治療 低濃度アトロピン治療について

アトロピンについて

アトロピンは調節麻痺(毛様体筋の反応を麻痺させ、瞳孔を縮める筋肉の反応を麻痺させる)を起こす薬剤で、以前から屈折(遠視・近視・乱視)や斜視を調べる検査薬として使用されてきました。いくつかの研究から、近視進行抑制への効果が期待できることがわかってきました。検査薬剤は1%で用いますが、治療薬剤(マイオピン)は0.01%もしくは0.025%を用います。

Myopine0.01%とMyopine0.025%の写真

使用方法

一日1回、寝る前に点眼します

副作用について

  1. 羞明(まぶしさ) 瞳孔径が0.5~1.0mm程度散大(瞳がひらく)する
    日中の光のまぶしさにほとんど影響を及ぼさないため、サングラスも不要です。
  2. 近見障害(手元の見えにくさ):近見障害を訴えるお子さんはほとんどないと報告されています
  3. アレルギー性結膜炎 4%

副作用の少ない治療薬とは言えますが症状がある場合は休薬となります。

注意点

治療にかかわる検査など全て自費となります。

対象年齢: 3歳以上18歳以下
検査費用: 1回3000円(視力、屈折、眼軸長測定など)
点眼費用: マイオピン0.01% 1本 4,000円(税込)
      マイオピン0.025% 1本 4,500円(税込)
処方開始日より検査費用が必要となります。
通院間隔: 処方後1か月に診察を行い、その後は大体3か月ごと検査します。

 近視の進行を完全に抑制するものではありません。
効果には個人差があり、投与前にそれを予測することはできません。

<参考資料>